あとおしの活動の中で最も活用しているのがローカルダイアログワークショップです。
「どんなワークショップなんですか?」とよく聞かれるのですが、これがですね…
とてもおもしろい!!!
しかし、実際にやってみないとそのおもしろさが伝わらないのが現状です。このことに、大変もどかしさを感じていました。
そこで、この機会に「ローカルダイアログってなんなの?!」を言葉にしてみたいと思い、実際の様子をレポートにまとめてみました!
※LocalDialogのHPからも詳しくご確認いただけます
第1回目のローカルダイアログワークショップ実施レポート
あとおしは、八女市市民との協働によるまちづくり提案事業の採択団体として、令和5年4月から活動をスタートしました。地域の人たちが主体的にまちづくりに取り組む風土をつくり、チャレンジが循環していくまちづくりを目指しています。
そのひとつとして、ローカルダイアログを通してまちづくりに関心をもつきっかけを作り、まちづくりしたい仲間を増やし、自らもプレイヤーとなりながら、まちづくりのチャレンジをあとおしする活動を行っています。
令和5年6月3日(土)に、八女市民会館おりなす八女の研修棟第5会議室にて、第1回目となるローカルダイアログの体験会を実施しました。
参加者は5名。八女市の民間企業でまちづくりの活動を行っている方や、行政職員としてまちに関わっている方、地域おこし協力隊として地域外から移住してきた方、地域をもっと知りたいと思っている方等、まちづくりに関心のある方が参加してくださいました。
ありたい八女市の未来の姿を思い描く(ビジョンカード)
ローカルダイアログは、自分たちが住みたいまち、暮らしたいまちの姿を考え、カードを使って対話しながらまちづくり戦略をつくっていくワークショップです。
まずは、住みたいまちのビジョンについて対話します。ローカルダイアログの12枚の「ビジョンカード」の中から、どんなまちになったらいいかを考えて、みんなで1枚を選びます。
12枚の「ビジョンカード」は、「時代の変化に適応していく持続可能な地域」や「まちや地域に誇りや愛着がもてる地域」など、どれも素敵でまちにとって必要な、ありたいまちの姿(ビジョン)が書かれています。
その中から1枚に絞り込むのはとても難しいことですが、「これもいい」「これも必要」と悩みながら選んだカードは12番の「新しいことにチャレンジできたりそれを応援できたりする地域」でした。
この選択には、参加者自らが今まさにチャレンジをしており、「周りの方々から応援してもらいたい!」という思いが込められていました。
その他には11番「地域内外問わず多様な人と関わりながら賑わいのある地域」も候補としてあがりました。
最初は少し緊張していた様子のみなさんも、ありたい八女市の姿について対話しているうちにとてもわくわくした表情を見せていました。
カードを使いながら対話することで見えてきた今の八女市とは?(ダイアログカード)
続いて、「ダイアログカード」を用いて、今のまちの現状について対話しました。
カードに書かれた問いに対してYESかNOを選び、理由を話しながら、最終的にこのチームではYESなのか、NOなのかを決めます。
参加者の住環境や職場環境など、置かれている立場は異なり、同じ市内に住んでいても市街地に住んでいるか過疎地に住んでいるかで意見が異なります。また、元から住んでいる人と移住者では、さらに視点が異なる場合もあります。
他者の意見を聞くことで、「そういう見方もあるんですね」と新たな気付きにつながることも多いです。
今回使ったカードは15枚。事前に運営メンバーで話し合い「これに対する意見を聞いてみたい」という観点で選びました。
15枚のダイアログカード
中でも特に印象的だった問いを紹介します。
①1-3 仕事と生活のバランスがとれている人が多いと思う
最初の問いは仕事と生活、いわゆるワークライフバランスについてです。
地方は都会に比べて仕事に追われず、生活を重視できる印象がありますが、実際はどうでしょうか?
参加者はまず、自分の意見を整理して、YESかNOを挙げました。
YES:3人
NO:2人
意見が二分されました。まずは、YESと答えた方々の意見です。
「都会に比べて、仕事中心の生活ではないですね。」 「福岡市で働いていたときは通勤が大変でしたが、八女の人々はいきいきとしていると感じます。」
皆の意見を踏まえ、再度YESかNOを挙げてもらいました。
YES:4人
NO:1人
他の参加者の意見を聞いたことで、八女市の良さを改めて認識したのかもしれません。
②2-2 住んでいる地域にこれからも住み続けたいと思う
この質問には、満場一致でYES!参加者の皆さんの八女市に対する愛情が伝わってきました。
③8-4:病気や高齢になっても暮らしやすい体制(医療・福祉・生活支援)が整っていると思う
病気・高齢に関する問いです。都市部とは異なり、地域の医療体制に不安を感じている人も多いかもしれません。実際に八女市の方々はどのように感じているのでしょうか。
YES:2人
NO:3人
ほぼ意見が割れる結果に。
「(医療・福祉体制には)地域差があると思う。施設がたくさんある市街地はいいけど、山間部などは厳しいと思う。」
「寄合タクシーはあるけど、前日までに予約しなければならないのが面倒なので、あまり利用されていないですね。」
同じ八女市内でも市街地と山間部では医療・福祉体制に大きな差があり、それが住民の満足度の違いにもつながっているようです。
④6-2:文化や言語が自分と異なる人々を理解しようとする雰囲気があると思う
海外からの観光客や労働者が増えてきた昨今。八女市には移住してくる人も増えていますが、そんな市外から訪れる人や文化を受け入れる土壌は整っているのでしょうか。
YES:1人
NO:4人
NOのほうが多いという結果に。どのような背景でNOが多数派になったのでしょうか。
「音楽イベントの際に、来場者のスペイン人と仲良くなれた。」とYESの方の意見がある一方で、NOの方からは以下のような意見がでました。
「移住者や外国人が身近にいて気になっているけど、どうしていいか分からない。」
「アジア系の労働者が多いけど、話したことない。つい警戒してしまう。」
「移住してくる人にとっては障壁が大きいと思う。外国人移住者から挨拶してくれても、返せないことがあった。」
「地域によっては閉鎖的。近所に知らない人が引っ越してくると警戒してしまう。誰かに紹介してもらうと警戒がとける。」
地域内での結束が強い反面、移住者や外国人などの地域外から来た人に対しては警戒心を抱く人が多いことも窺えます。
再度YESかNOを聞いてみました。
YES:0人
NO:5人
全員がNOという結果に。異文化や移住者にとっての住みやすさについて、参加者全員が課題と感じているようです。
子どもたちに残したい未来の八女市に対して、私たちができることとは?
次は、アクションプランの種を見つけるためのワークです。
まちづくりのアクションのタネとなるアイデアを出し合います。そこで出てくるのが最初に選んだビジョンカードの「新しいことにチャレンジできたりそれを応援できたりする地域」です。
このビジョンカードに対して、どのダイアログカードがカギとなるのか、3枚のダイアログカードを選び、NOのカードがYESに変わるために必要なアクションは何か?YESのカードがさらに改善され、ビジョンカードのまちに近づくにはどうすればいいのか?これらをアイデアとして付箋に書き出していきました。
今回選んだ3枚のカードはYESが2枚とNOが1枚。
YES
4-3:行政(役所・役場)からの情報がチラシやポスター、ホームページなどで住民に広く提供されていると思う
7-6:子供が将来の夢や希望の実現に向けて学べる環境があると思う
NO
6-2:文化や言語が自分と異なる人々を理解しようとする雰囲気があると思う
6-2のカードは、「海外からの技能実習生の方が数名で集まり買い物をしている姿を見かけるけど、地域の人と話している姿や地域の集まり事などでは見かけない」という意見から、今回はNOを選びました。
「新しいことにチャレンジできる地域」を実現するためには、周囲の人に自分の考えや思いを理解してもらう必要があります。
アイデアとして「各地区をめぐりながら交流会を開催する」や「違いを知るために自分の好きなBBQをする」など、すぐに始められそうなことがあがりました。
また、4-3のカードには、「HPやチラシで移住や新しいチャレンジを応援する特設ページなどを作り、広く告知をする」や「参加しやすい、募集・申し込みがしやすいプラットフォームや窓口をつくる」などの具体的なアイデアが提案されました。
7-6は、未来の地域の担い手にもなる子どもたちに、もっとチャレンジできる機会を増やしたい、という子育ての視点からの意見があがりました。
八女市には大学がないので、高校を卒業すると同時に地域外に出ていく学生も多いのが現状。オンラインを活用した学びの機会もあるので、カードはYESを選択しました。
地域外に出てしまっても、関わりたくなるような地域でありたいという思いから、「素敵な大人はたくさんいるので、いろんな大人の活動や体験について、子どもが話を聞けるような場をつくりたい」「子どものチャレンジを大人が見守るイベントを開催したい」等のアイデアがでました。これらのアイデアには、大人たちの思いが詰まっていました。
これらのアイデアを実現するためには、行政や地域の他の団体や地元企業との協力が必要です。自分たちで取り組める部分もあり、これからの進展がとても楽しみです。
最後に参加者の皆さんに感想を伺いました。
「皆さんから出る一つひとつの意見にハッとさせられました。自らの活動にも活かせそうなアイデアがたくさん得られましたし、他の方が地域のことを思いながら普段から生活していることを実感できたのもよかったです。皆さんと一緒に参加で本当にきてよかったです。」
「いろんな方向から物事を考えることの大切さをあらためて実感しました。自分の立場から見るとこう思うけど、他の人から見たらどうだろう、という視点を持つ良いきっかけになりました。」
「まちをよくするための方向性を考えるきっかけになりました。自分とは逆の意見にも触れられたことも、とてもためになりました。」
まちづくりに関わる人をつないであとおししたい
今回の体験会を通して感じたことは、地域の住民が持つ熱意や地域への愛情が、地域の発展やまちづくりに大きな力を与えるということです。
運営メンバーからも、「改めて素敵な歴史や文化があるまちだと思った」「まちづくりや八女に思いがある人がたくさんいると思った」といった感想がありました。
また、「素敵なアイデアがたくさんでたので具体化するようなアクションにもつなげたい」という意見もあがり、次回以降に活かしたいと思います。さらに、地域の課題に対する解決策を模索し、積極的な行動につなげたいと考えています。
これからも私たち「あとおし」は、ローカルダイアログを通して、まちづくりを考えるきっかけをつくっていきます。
そして、今後は「具体的にまちのために活動したい!」という人を募り、グループにしてイベントの実施やチャレンジが循環していくまちづくりを目指して、新たなまちづくり提案事業のための伴走支援など、あとおししていきます。


コメントを残す